タッチセンサ 一般使用上のご注意
検出感度について
センサの検出感度を決める場合は、次の事を充分考慮して下さい。
- ①センサ感度値≦電極の容量Cp+電極配線の容量Cwならば、タッチする前に動作したままとなり検出できません。
- ②センサ感度値≦電極の容量Cp+電極配線の容量Cw+タッチ容量Coで動作します。
- ③センサ感度値≧電極の容量Cp+電極配線の容量Cw+タッチ容量Coならば、動作はしない事となります。
タッチ容量の参考データ:
- 大人が椅子に座り、床に足をつけてタッチ電極に触れた時……………………約200pF
- 大人が10cm位浮き、また人の周囲10cmに何もない時…………………………約 90pF
- 15mm×15mmのタッチ電極に厚さ50μmのビニールを乗せて指で触れた時…約 30pF
- 同上タッチ電極を厚さ350μmの綿手袋をして指で触れた時……………………約 8pF
電源について
- (1)タッチセンサのタッチ(検知)電極は、検出回路に接続されています。
従って、センサ用の電源とAC電源間は安全に必要かつ充分な耐電圧と絶縁を確保して下さい。 - (2)DC/DCコンバータ電源で1次-2次間の結合容量が1,000pF以下の場合は、1次0V ラインと2次0Vライン間に1,000pF程度の容量で結合して下さい。ただし、コンデンサの耐電圧は必要な値まで充分確保して下さい。
- (3)タッチセンサは大地との静電容量を検出していますので、電源が電池の場合は(+)又(-)側を大地 に対し大きな容量を持ったもの(筐体等)に直接あるいは1,000pF程度のコンデンサを介して、 接続してください。
- (4)大出力の放送局の近くや、大きなインバータ機器の電源を使用されてDC電源に大きなコモン モードノイズがある場合は、0Vラインに0.1μF以上のコンデンサを介しF.Gに排除して下さい。
配線について
- (1)タッチセンサの場合(HPG,HLG除く)
GNDラインはVCC、OUTラインを含む他の全ての配線と束ね配線はしないで、
必ず分離配線として下さい。
タッチ電極に印加された静電気電荷はGNDラインから大地へ排出しますが、VccやOUTなど他の配線が
平行に近くにあると静電気電荷の移動に伴う高周波高電圧がその配線に静電誘導しセンサを壊すことがあります。
また、GNDラインは大地に対し大きな静電容量を持つポイントまで、30cm以下の長さを目標になるべく短く、
抵インピーダンスで配線をしてください。
長く、高インピーダンスになりますと静電気電荷の排出ができなくなり、センサを壊すことがあります。 - (2)HPG,HLGの場合
GND、F.GラインはVCC、OUTラインを含む他の全ての配線と束ね配線はしないで、
必ず分離配線として下さい。
タッチ電極に印加された静電気電荷はGNDラインから大地へ排出しますが、VccやOUTなど他の配線が
平行に近くにあると静電気電荷の移動に伴う高周波高電圧がその配線に静電誘導しセンサを壊すことがあります。
また、GND、F.Gラインは大地に対し大きな静電容量を持つポイントまで、30cm以下の長さを目標になるべく短く、
抵インピーダンスで配線をしてください。
長く、高インピーダンスになりますと静電気電荷の排出ができなくなり、センサを壊すことがあります。
タッチセンサの使い方
- (1)1個のセンサで1個の電極にタッチしたことを検出する場合
この場合は一般的な使い方です。 - (2)1個のセンサで2個の電極にタッチしたことを検出する場合
センサの電源は1次-2次間の結合容量が15pF程度以下の極めて小さなスイッチングレギュレータ等にして下さい。
そして、タッチ電極と0Vの2個を電極にし、出力はフォトカプラを介して信号を出力して下さい。
従って、前記の結合容量(1,000pF程度)を用いてはいけません。
- (3)2個のセンサで2点にタッチしたことを検出する場合
タッチセンサは、高周波発振回路を用いています。
従って、同一センサを近づけて2個使用すると相互干渉により正しい検出ができません。
この場合は、異周波数センサが2回路入ったHTSW又は異周波数センサを組み合わせてご使用下さい。
周辺機器等から受ける高周波の影響について
当タッチセンサは、微弱の高周波を使用していますので、周囲機器等から受ける高周波の影響については、
あらかじめ充分な検討の上、ご使用下さい。
耐静電気について
冬の乾燥した時、化繊の服や羊毛の絨緞等の影響を受けて、人体には数千~数万ボルトの静電気が発生します。
この静電気を持った人が、タッチ電極に触れると放電します。
当社のタッチセンサは、外部に何ら部品等を接続することなく15kV~20kV(500pF,500Ωに於いて)の静電気に耐えることができます。
タッチ電極に放電される静電気は全てGNDラインに放出します。
従ってGNDラインは可能な限り短く、あるいは可能な限りインピーダンスを小さくして下さい。
なお、耐静電気は配線の状況や接続回路により変化します。実機でご確認下さい。
GNDラインをコンデンサ等を介し、F.Gに排出すればより効果的です。
使用環境について
水・油・薬品・塵埃・腐食性ガス等がかかる場所、急激な温度変化の起こる場所、直射日光のあたる場所での使用及び保管は避けて下さい。
また、結露や氷結すると商品寿命や特性に大きな影響を及ぼします。
相互干渉について
一つの機器にて同一周波数品の複数のタッチセンサを使用し、同じ人がそれら複数のタッチ電極を触る時にタッチセンサ間で相互干渉が起きます。そのときそれぞれのセンサの出力は不定になります。
次頁にて相互干渉が起きるしくみからセンサの出力が不定になることについて詳しく説明をしています。
相互干渉のしくみを理解するためにはタッチセンサの人体検出の動作原理を先に知る必要がありますので、最初に動作原理から説明します。
人体検出の動作原理
8-1.タッチセンサの構成
センサテック社のタッチセンサ(HTS-30Y/HTF/HTG/HPG/HLGシリーズ)は下の回路ブロックにより構成されています。
(HTS-30Z/HTS-30Lシリーズは金具の接触端子が電線に変わるだけです)
*1 : タッチ電極に直流電流が流れないようにします。人体に直流電流を流さず、人体に何ら影響を与えないようにする。
またタッチ電極が直流電流により電蝕(電食)するのを防ぐ役割もあります。
図1.回路ブロック
8-2.動作原理
- (1)図1の高周波発振回路で生じる高周波正弦波電圧(以下 発振)は分極防止コンデンサ、 静電気保護抵抗と静電気除去回路、接触端子を介しタッチ電極に接続されています。
- (2)人体がタッチ電極に触れますと、その発振は停止し(0Vになり)ます。
- (3)発振が停止しますと、検波回路で抽出される高周波脈流電圧がなくなるため、 それを平滑している直流電圧が0Vになります。
- (4)平滑された直流電圧は、一定の電圧に設定された閾値電圧と比較回路で比較され、 閾値値より小さくなった時、スイッチング信号がレベル弁別回路から出力されます。
- (5)このスイッチング信号をパワートランジスタで増幅しセンサはタッチ検出の出力信号を出します。
タッチセンサの発振回路の説明
- (1)タッチセンサの発振回路の周波数選択度Qを極めて大きくしています。
Qが大きいと下の図2のように発振周波数における正弦波発振電圧のゲインの尖頭値が大きくなる、
つまりゲインが大きいと正弦波発振電圧の振幅が大きくなる:2-a 発振周波数の帯域が狭くなる:2-b - (2)発振回路の周波数選択度Qを極めて大きくなるように設計している理由は、
● タッチセンサの数10pFオーダーの高感度を実現するため。
● 発振周波数の帯域を狭くすることにより、タッチ電極や電源、GNDから入り込む外来ノイズによるタッチセンサの誤動作を防ぐためです。
これにより高周波発振回路の発振周波数から少しでもずれた周波数は受け付けずその影響を全く受けずに正常動作できるようになります。 - (3)大きいQをもつ発振回路は、同時に高感度の受信回路にもなります。
それは前項の(2-a)「発振周波数における正弦波発振電圧のゲインの尖頭値が大きくなる、つまりゲインが大きいと正弦波発振電圧の振幅が大きくなる」に起因します。
タッチセンサの外部から発振回路で定めた発振周波数と全く同じ周波数のノイズが発振回路に入ると、発振回路がその発振電圧を大きく増幅させてしまい、発振してしまうことになります。
これはQが大きいほど顕著になります。
これが次項で説明する「相互干渉」の原因になります。
相互干渉
下の図3のように1つの機器に2個のタッチセンサ(①、②とする)を使用し、その高周波発振回路の発振周波数が同じ(*2)である条件下において *2:例えば標準周波数品同士の場合、あるいは、異周波B品同士の場合などのこと。
- (1)タッチセンサ①のタッチ電極に人体がタッチすると①の発振は停止し、検波平滑された後の直流電圧が0Vになるので、
弁別回路の閾値より小さくなり、センサは人体のタッチ検出を示す出力信号を出し、出力動作状態になります。 - (2)この(1)の状態を保ったままタッチセンサ②のタッチ電極に同じ人体が接近しますと、 タッチセンサ②の微弱な発振が人体を介し、
タッチセンサ①の発振回路に入るため、発振を停止させている①の発振回路を外部から強制的に発振させてしまい、
①は人体がタッチしているにもかかわらず、出力信号を出さない復帰状態に戻ります。 - (3)そしてタッチセンサ②のタッチ電極を触ることで、タッチセンサ②は内部の発振を停止しようと試みますがタッチセンサ①の発振が
人体を介し②の発振回路に追加入力されるため、発振電圧の低下が妨げられ、弁別回路内の閾値より小さくならずに出力信号が出ずに復帰状態のままになります。
①②両方ともが、タッチしても復帰状態、すなわち出力動作しない状態が「相互干渉」の代表的な動作です。 - (4)タッチセンサの周波数選択度Qが極めて大きくなるよう設計していますので、
[タッチセンサの発振回路の説明](2-b)「発振周波数の帯域が狭くなる」が要因で、①と②の発振周波数が異なる(*3)ときがあります。
このときは相互干渉が起きず①②両方とも正常動作します。
*3:同一周波数品同士でも、発振周波数のばらつきがどうしてもあります(電子部品の定数ばらつきがあるためです)。
このばらつきの範囲内で異なるという意味です。また部品定数は周囲温度によってもわずかに変動します。 - (5)人体がタッチセンサ①のタッチ電極だけをタッチしたときに、②が異常な動作をすること場合があります。
これは①②が同一の電源、GNDを共用していることで、電源やGNDを介し、微弱な高周波発振電流として②に伝わり、
その周波数が②と一致するときに②へ影響しています。
- (6)人体がタッチ電極にタッチしたことにより、人体の静電容量の影響で、ほんのわずかですが発振周波数の変化が起きます。
そのときに周波数が高いほうと低いほうの違いやその周波数の差幅により、影響のしかたが変わります。 - (7)相互干渉により2つの正弦波発振電圧(sin2πf1と sin2πf2で表される)が混ざると、
sin(2πf1) + sin(2πf2) = sin(2π(f1+f2)/2) + cos(2π(f1-f2)/2) となるため、
※わかりやすくするため、振幅や位相は割愛する。f1、f2は発振周波数です。
低い周波数(f1-f2)/2のビート(うなり)が生じ、これが相互干渉時のセンサの出力の挙動に影響す ることがあります。 - (8)以上をまとめますと、一つの機器にて同一周波数品の複数のタッチセンサを使用するとき
- ㋐同一周波数品どうしでは全く同じ発振周波数となることが当然あり、同じ人が両方のタッチ電極を触ると人体を介し、 発振が伝わり、相互干渉が起きる。
- ㋑同一周波数品どうしでも、発振周波数はある範囲でばらつきがあり、しかも周波数選択度Qが極めて大きいため、全く同じ発振周波数になるとは限らない。
- ㋒発振周波数を決定づける電子部品の定数が温度変動により、わずかに変動しつづけるため、発振周波数はいつも同じ値に固定されることはない。
- ㋓人体を介さずとも、電源やGNDの共用による微弱高周波発振電流の影響を互いに受けることがある。
- ㋔タッチ電極へ触ることによりわずかに発振周波数が変動します。 変動後の発振周波数が一致すると相互干渉が起きることがある。
- ㋕ばらつきにより発振周波数の高い方と低い方があり、さらにその周波数の差幅も組合せにより様々です。
- ㋖相互干渉時に2つの発振電圧が足し合わさると、干渉前の各周波数の差の半分のビート(うなり)成分 が生じるため、センサ内部回路に影響
し、出力の挙動が変化することがあります
【結論】
一つの機器にて同一周波数品の複数のタッチセンサを使用するとき、相互干渉時のタッチセンサの出力動作状態は基本的には
タッチしている場合の検出信号を解除する(タッチしているにもかかわらずセンサの出力が動作しない)のが大半ですが、
前述の㋐~㋖の色々な条件があるため、干渉後の状態は多様になり、センサの出力やその発振の状態は不定になります。
相互干渉の対策
相互干渉は完全に防ぐことができます。異なる周波数品では発振周波数が一致しないように設計しています。
色々な周波数の異周波数品を用意していますので複数のタッチセンサを同一機器での搭載を検討される場合は異周波品を検討して下さい。
また、お客様でのタッチセンサの周波数品毎の在庫や組立工程における外観上の区別管理のためもし必要ならばコネクタの色の変更なども検討できます。